「過払い金」に関するお役立ち情報
過払い金返還請求で訴訟をする場合のリスク
1 過払い金返還請求の手続きの流れ
過払い金返還請求では、対象業者から取引履歴の開示を受け、引き直し計算を行って過払い金の金額を算出し、対象業者に対してその金額の返還を請求することになります。
返還の請求を行うと、通常、業者からその請求に対する回答がありますので、そこから交渉が始まることになります。
その交渉で、ご依頼者の方が納得できる金額および返還期日が業者から提示された場合は、業者と和解を締結し、和解金の支払いを受けて手続きは終了するということになります。
2 訴訟が必要になるケース
しかし、和解交渉が上手く進まない場合は、納得いかないものの業者の提示する金額で妥協するか、または訴訟に進まなければならないということになります。
和解交渉が難しいケースには以下のような事案があります。
⑴ 過払い利息が多額の場合
業者と長期間継続的金銭消費貸借取引を行い、とくに返済のみの期間が長いと、過払い元金も高額になりますが、それに対して発生する利息も高額になることがあります(利息のみで100万円を超えることもあります)。
しかし、多くの業者は、訴訟前の交渉では元金をベースとした和解提案になりますので(例えば元金の8割など)、利息が100万円ある場合、利息も含めた金額の回収を目指す場合は訴訟が必要になります。
⑵ 争点がある場合
例えば、A消費者金融と長期間にわたって継続的金銭消費貸借取引を行っているが、その間に取引のない期間が2年あり、空白期間前後の取引を一つの取引とみると過払い金(元金)は300万円、別々の取引とみると100万円の場合、業者側は通常、別々の取引であることを前提として和解交渉を行ってきます。
このような場合、仮に業者側から譲歩があったとしても、100万円プラスアルファ程度になりますので、300万円近い金額を回収するためには訴訟をして勝訴する必要があります。
3 訴訟をする場合のリスク
しかし、訴訟をする場合はリスクも伴います。
まず、⑴の場合、実質的な争点がなければ、通常は、請求者側の請求内容をベースとした和解がスムーズにできますが、訴訟前の交渉では持ち出されなかった争点を主張され、訴訟が長引いてしまうことがあります。
その争点のために、訴訟前の和解交渉時の業者提案額よりも低い金額での和解になることもないとは言えません。
また、十分な金額を回収するためには判決を取得しなければならない業者もありますが、勝訴判決を取得しても控訴されることがあり、その場合は回収までかなりの時間がかかることになります。
また、⑵の場合は、解決までの時間がかかるというリスクのほか、訴訟前の和解交渉時の業者側提案額は訴訟では引き継がれませんので、上記事例で例えば訴訟前に150万円の提案がなされていたとしても、訴訟において裁判官が業者側の主張に傾いた心証(裁判官の考え方)を開示した場合は、150万円での和解は難しくなる可能性があります。
もちろん、敗訴した場合は100万円になってしまいます。
以上が訴訟をする場合のリスクになります。